2016年10月4日

丸島和洋著『真田信繁の書状を読む』(星海社新書)で真田信繁がもっと好きになる(DAY4)

NHK大河ドラマ『真田丸』が人気のようで、書店には真田信繁ら真田一族に関する本が並ぶ。
でも、 一冊も手にしていない。
ぼくのなかでは池波正太郎の『真田太平記』が究極の真田本だからだ。
いや、正確には「だった」。

この書評を読んでしまったからだ。

「信繁にとどまらず、歴史学全般への導きの糸(レビュアー:歴史作家 桐野作人)」(星海社新書 | ジセダイ)


著者の丸島和洋氏は大河ドラマの時代考証を担当する方で真田家にまつわる本を4冊も書いている。
もしかしたら池波正太郎も知らなかった、真田家のことが書かれているのかもしれない!

「真田太平記」命!だったはずだが、会社の帰りに入手して一気読み。
あらためて真田信繁が好きになった。

丸島和洋著『真田信繁の書状を読む』とは


まず、この本は、
第一章 史料を読むということ
第ニ章 少年期の書状
第三章 秀吉馬廻時代の書状
第四章 九度山配流期の書状
第五章 大坂の陣時代の書状
の五章で構成されている。

第ニ章以降の17の書状の解説も面白いが、第一章の書状を含めた史料の位置付けもまた興味深い。
日記は読まれる前提で書かれていたとか、書状に使われたのが保存性のよい和紙だったから現存しているなど、日本独自の事情が歴史研究に影響しているのがわかる。

そして、本編で各書状を読んでいくと、
  • 直筆の書状そのものの迫力
  • 書状からあふれる人間味
  • 変わっていく真田信繁の立場と心情
が伝わってくる。

書状のなかで特に好きなのが、
九度山時代の借金生活でひもじいなか焼酎をねだる書状と、
石田三成が真田家を味方につけようとする書状だ。
 
前者の現代訳をさらに自己流にぶっちゃけると、
「太閤殿下にもらった焼酎が美味しかったなあ。どうにかしてまた飲みたいんだよなあ。」(信繁)
と「真田丸」で見せる人間ぽっさ以上に、人間くささがあふれている。

そして、後者がさらにいい。

徳川家康が上杉征伐に向けて江戸をたった後、石田三成は挙兵。
関ケ原の戦の前哨戦として、東軍と西軍が「書状」で各地の勢力を味方にしようと、あの手この手で勧誘する。
「真田丸」のなかでも、大谷吉継が病身をおして、書状を書き上げる姿が印象的だ。

実際、三成は昌幸宛に複数の書状を送ったとみられている。

著者が翻訳した現代語で読むと、三成の必死さがわかる。またしても自己流にアレンジすると、
「さ、真田殿は味方と思っていいんですよね。信濃あたりで味方してくれるのは、あなただけなんですよ!」(三成)
という感じだ。

しかし、九度山から大坂入りした後の信繁の書状は、一転して死の香りが漂う。
死を覚悟した武士(もののふ)の儚さや迫力が伝わってくる。

この覚悟を、堺雅人さんがどう演ずるのだろうか。
もしかしたら、兄・信幸とのやりとりは「書状」によるものかもしれない。

情報の伝達方法が時代に及ぼした影響の大きさがわかる。
そして、これからも新しい書状が見つかり、別の真田信繁が生まれるかもしれないのが、また面白い。

この面白さをTweetしたところ、著者の丸島和洋氏本人にRTしてもらった。
これもまたSNSが普及した現代ならではの読書の楽しみだろう。

大河ドラマ「真田丸」がさらに楽しくなる、オススメの一冊!読むならいま!

後記

ぼくのなかでは、
真田本=池波正太郎『真田太平記』であり、
真田劇=水曜時代劇『真田太平記』で完成形でした。

丹波哲郎演じる真田昌幸は、秘密の部屋で、コリコリ音を立てて手のなかの胡桃を転がす。
草刈正雄演じる真田幸村は、女忍びお江(こう)とのやりとりにどぎまきする。

いわゆる真田十勇士が出てこない、硬派な時代劇として大好きでした。
原作の文庫本をどっぷりハマり、2、3日部屋から出られないほど。

その印象が強かったので、三谷幸喜氏版『真田丸』は正直、期待しませんでした。
コメディタッチの真田幸村になるのではと思っていたからです。

でも、断然、面白い。
典型的な戦国武将の人物評と、綿密な時代考証から得られた情報を組み合わせて、なじみがあるけど、新しい真田家を描こうとしています。

そして、1月に放送された、NHK『歴史秘話ヒストリア』の「徹底解明!これが“真田丸”だ~地中に残された幻の城~」も衝撃でした。
真田丸の位置を調査したところ、従来の出城のような形状ではなく、真田丸の攻防は市街地戦だったというのです。

しっかりとした時代考証をするNHKの大河ドラマがどんな真田丸をめぐる戦いを描くのか、最新の情報に基づいた真田信繁が生まれる!と期待が一気に高まりました。

実際、秀吉の馬回りとして働く信繁や、豊臣政権との深い関わりは、いままでのイメージにはありませんでした。

まもなく大坂の陣がはじまります。
悲劇に終わるとわかっていますが、どう描かれるか、楽しみです。

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